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広瀬鎌二〈前編〉超スパルタで叩き込む建築教育

建築家として、また研究者として「家づくり」を実践した広瀬鎌二。武蔵工業大学での教育活動にも独特の持論で挑んでいたようだ。いま以上に各大学がそれぞれの特徴を色濃く見せた時代、武蔵工業大学の特色でもある、広瀬鎌二の教育とはどのようなものだっただろうか。それらは今、どのようなかたちで引き継がれているだろうか。「建築家研究」第一回は、武蔵工業大学(現在は、東京都市大学と改称)出身であり同大学教授の建築家、新居千秋氏に広瀬鎌二の時代をご紹介頂いた。

「広瀬先生の授業って、朝9時から翌1時までなんですよ(笑)。君たちは知力において東大に劣るのだから、気力と体力で勝るように、なんて言って。」

新居さんはいたずらっぽい笑顔で、1968年頃に広瀬鎌二の授業を受けた学生時代について話す。しかしその内容といったら、現在の建築教育現場ではとうてい想像できないような、超スパルタである。学生の自由だの個性だの、そんなものは教室になかった。

「とにかく一日中やらせるわけ。朝から晩まで13科目もとらされて、休みも何もあったもんじゃないですよ。これはひどい学校に来てしまったと思ったよ。生徒が逃げ出さないように、先輩が出入り口で見張っていたりして。延々と描いて描いて、それを何とか乗り越えられたら、あなたは体力では東大に勝ちましたね、だって(笑)。」

広瀬が授業で使用していたパースの一部。線の細さ、線の本数など、全ての箇所に対する書き方が徹底して指定されていた。

広瀬がひたすら生徒に課した授業の内容とは、広瀬と同じ絵を描けるようになるための訓練であった。

「全く同じロットリング、全く同じ番号の色で塗るという指導が徹底していた。見本の絵に振ってある番号の通りに描いていくんだけど、これがまた徹底している。まず紙をキャンバスに水張りするところからやらせるの。水彩の色番号だけでなく、何番と何番の絵の具を皿の上でどういうふうに混ぜるとか、そういうことまで徹底的に指定する。見本を製図板に張って、番号順に書いていく。葉っぱの位置とか陰とか、そういう細かいところまで完璧に同じものが描けるように指導されるわけ。僕はそんなのつまらないと思って、背景を勝手に夕陽に変えてみたら、えらい怒られてね。」

今でこそ、学生それぞれの個性を認める、少なくとも自由課題でそれぞれの意志やアイディアで設計らしきものをやらせてみる、という教育が一般的だが、当時の広瀬の授業にそんなものはなかった。

「おかげで僕ら卒業生はパースとかもみんなうまいです。高校卒業していきなりそればっかりやらされるんだから。僕らの代は、防水の仕様とか線の傾きとかまで徹底的に叩き込むようなカリキュラムが実験的に導入された、最盛期みたいな代だった。今はそこまではやっていないけれど、例えばウチの学校を出れば、その日から矩計をかけるようになっている。そんなこと他の学校ではやってないから重宝がられて、今でも就職率はすごくいいのです。」

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